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小西 啓之; 山下 正人*; 内田 仁*; 水木 純一郎
Materials Transactions, 46(2), p.329 - 336, 2005/02
被引用回数:28 パーセンタイル:80.32(Materials Science, Multidisciplinary)少量のクロムを含む従来型耐候性鋼の耐食性は、塩分飛来環境下では著しく減少する。そのため合金元素としてニッケルを添加した耐候性鋼が、塩分飛来環境下での使用に耐える新型鋼材として注目される。このような耐候性鋼の保護性さび層の構造を知る手がかりとして、宮古島で大気暴露した鉄,鉄ニッケル合金,鉄クロム合金の各試料片の表面に生成したさび層の分析を放射光を用いたCl K-XANES, Fe K-XANESによって行った。Fe K-XANESスペクトルをパターンフィッティング解析することで、さび層の主要構成成分であるゲーサイト,アカガネイト,レピドクロサイト,マグネタイトの組成比を求めることができた。いずれのさび試料についても最も組成比の高い成分はアカガネイトであり、しかもFe-Ni合金のさび中のアカガネイト組成比はFe-Cr合金さび中のそれよりも高い結果となった。一般にアカガネイトは鋼材の腐食をより進行させるということを考えると、塩分環境でより耐食性が高いはずのFe-Ni合金でさび中のアカガネイト量が多いことは意外である。両者のさび中のアカガネイトが質的に異なるものであり、Fe-Ni合金さび中のアカガネイトは腐食の進行に関与しないと考えられる。一方、さび層のCl K-XANESスペクトルは人工育成アカガネイトのそれと極めてよく似ているが、主吸収ピークの立ち上がりにアカガネイトのスペクトルにはないショルダーピークが見られることから、さび層はアカガネイト以外にも何らかの塩化物を含んでいる。幾つかの参照用塩化物試料とスペクトルを比較したが、さび中の塩化物を特定するには至っていない。しかしこのことはClが直接CrやNiなどの添加合金元素と結合していないこと、したがって金属塩化物を生成することにより添加合金元素の耐食性に関する役割を阻害するものではないことがわかる。ショルダーピークは合金元素の添加量がそれぞれある値より低いときにのみ現れており、この塩化物の生成プロセスと鋼材の腐食率との間に関連性があると考えられる。
小西 啓之; 山下 正人*; 内田 仁*; 水木 純一郎
Materials Transactions, 45(12), p.3356 - 3359, 2004/12
被引用回数:10 パーセンタイル:53.05(Materials Science, Multidisciplinary)耐候性鋼中の添加合金元素であるNiやCr、環境中の腐食イオンであるClが耐候性鋼の耐食性に及ぼす働きを調べるために、飛来塩分量の多い試験場で大気暴露した純Fe,Fe-Ni合金,Fe-Cr合金から表面さび層を採取し、そのCl K吸収端XANESを放射光を用いて測定した。二元合金表面のさびのXANESスペクトルには吸収端近傍にショルダーピークが現れる。現時点でこのピークに対応した塩化物は特定できていない。そのピーク強度は暴露試験材中の合金元素の種類と量に依存するが、ピーク位置は一定であった。このことからさび中のClイオンは添加合金元素と直接結合しているのではないことがわかった。
大谷 恭平; 塚田 隆; 寺門 宙*; 江幡 功栄*; 上野 文義
no journal, ,
1F PCV内部のロボットによる調査の結果、PCV内壁の炭素鋼の一部は気中と液中が交互に浸漬する環境にあることが明らかになった。先行研究より、乾湿繰り返し環境下において鋼の腐食は加速されることが報告されており、気液交番環境下のPCV内壁部の腐食が加速していることが予想される。しかし、これまでに気液交番環境における鋼の腐食研究は実施されていない。本研究では、炭素鋼が水中と気中を交互に出入りする回転型腐食試験装置を新たに構築し、気液交番環境を模擬した環境での腐食試験を実施した。試験前後の鋼材試験片の質量変化測定より、気液交番環境における鋼の腐食速度は常に水中に浸漬された場合より3倍以上早いことがわかった。回転試験における鋼材が気中に出ている期間は、鋼材表面は完全に乾燥せず薄い水膜が形成している状態にあることを確認した。鋼材は薄い水膜環境におかれることによって気中から鋼材表面への酸素の物質移動量が増大するため、水中に比べると表面に多量の酸素が供給されて酸素還元反応が加速されると報告されている。すなわち、気液交番環境における鋼材は気中に出ている期間の水膜の影響によって酸素還元反応が促進されて、腐食速度が増大したと考えられる。